小児泌尿器科について
小児泌尿器科では、お子さまの排尿の発達や、尿路・性器の先天的な構造の異常に関連する病気を幅広く診療しています。代表的な疾患には、夜尿症(おねしょ)・膀胱尿管逆流症・包茎・陰嚢水腫・二分脊椎・停留精巣・精巣捻転などがあります。また、頻尿・排尿時の痛み・陰部のかゆみや違和感といった日常的な症状のご相談も承っています。
些細なことでも気になる症状があれば、お気軽に当院へご相談ください。
学校の検尿で
異常を指摘されたら
学校で行われる尿検査(検尿)は、腎臓や尿路の異常を早期に見つけることを目的としています。そのため、特に自覚症状がなくても異常を指摘されるお子様は珍しくありません。実際には、小学校から中学校までの間に、約5人に1人のお子さまが一度は検尿で何らかの異常を指摘されるといわれています。蛋白尿や血尿などが比較的よく見られることがありますが、ほとんどは心配のないものです。
ただし、中には腎臓の疾患が隠れていることもあるため、「大丈夫だろう」とご自身で判断せず、異常を指摘されたら医療機関を受診し、精密検査を受けることが大切です。
子どものよくある症状
次のような症状が見られた際には、お気軽に当院までご相談ください。
- おねしょ(夜尿)
- 尿の色やにおいに異常がある
- 排尿時に痛みがある
- 股の部分(外陰部)に痛みやかゆみがある
- おちんちんや陰嚢の痛みや腫れ
- 日中におもらしをしてしまう
- 日中でもトイレが近い(頻尿)
- 膀胱炎が治らない・再発する
など
よくある小児泌尿器疾患
夜尿症(おねしょ)
夜尿症(おねしょ)は、通常6歳頃までに自然に治ることが多いですが、6歳を過ぎても続く場合には夜尿症と呼ばれ、診察や対応が必要になることがあります。原因や症状は子どもによってさまざまで、適切な診断と対策で改善が期待できます。
夜尿症のタイプ
夜尿症は主に次のように分類されます。2つのタイプが重なることもあります。
多尿型
夜間に作られる尿量が多くなるタイプです。水分や塩分のとりすぎ、ストレス、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が十分でないことなどが関係します。
膀胱型
膀胱の貯留機能がまだ十分でないために起きるタイプで、日中の頻尿や昼間のおもらしを伴うことがあります。
混合型
多尿型と膀胱型の両方の要素を持つタイプです。
診断のポイント
夜尿症は問診と検査で重症度を診断していきます。
- 尿検査(腎臓や尿路の異常がないか確認)
- 排尿日誌
・1日の水分摂取量
・排尿の回数と時間
・夜間のおねしょの回数・量(概算)
・最大膀胱容量(我慢できる量の目安)
家庭でできる対策
夜尿症は、生活習慣の見直しや工夫で少しずつ改善が期待できます。
何よりも大切なのは、叱らない・夜中に無理に起こさない・焦らずゆったりと見守ることです。
お子さまが安心して過ごせる環境を整え、ご家族全体でサポートしていきましょう。
生活の工夫
- 夕食後は就寝まで水分を控える
入浴後に喉が渇いたときは、氷を舐めるか少量の水で対応しましょう。 - トイレに行く習慣をつける
就寝前には必ずトイレに行くよう促しましょう。 - 便秘を防ぐ
便秘があると膀胱が圧迫され、夜尿を起こしやすくなります。
バランスの取れた食事や十分な水分、適度な運動が大切です。 - 温かく安心できる環境で眠る
冷えやストレスも夜尿の一因になります。お子さまが安心して眠れる環境づくりを意識しましょう。
夜尿症の治療について
夜尿症の治療には、内服薬による治療とアラーム療法の2つの方法があります。
内服薬は夜間の尿量を減らし、おねしょの改善を促す効果があります。
アラーム療法は「おねしょをしたときにアラームで知らせる」ことで、尿意を自覚し、排尿リズムを整えていく行動療法です。どちらの方法もお子さまの年齢や症状に合わせて選択し、必要に応じて併用することもあります。
受診をおすすめする場合
- 6歳を過ぎても夜尿が続く
- 日中の頻尿や昼間のおもらしがある
- 夜尿の頻度や量が多く、本人や家族の負担が大きい
こうした場合は一度受診してください。当院では排尿日誌の付け方から検査・治療まで、家庭と一緒に無理なく進められる方法でサポートします。
子どもの包茎
包茎とは、包皮の先端が狭く亀頭が完全に露出しない状態を指します。多くの新生児は生理的包茎であり、成長とともに自然に改善します。
ただし、炎症や感染、排尿障害を伴う場合は治療が必要です。排尿時に包皮が腫れる、亀頭が全く見えないといった症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
治療は主にステロイド軟膏の塗布や包皮の拡張などの保存療法で、多くは改善します。改善しない場合は、手術を検討します。
症状が良くなった後も、自宅でのケアを続けることが大切です。
亀頭包皮炎
細菌感染によって亀頭や包皮が赤く腫れ、痛みや膿が出ることがあります。
包茎の子に多く、軟膏や抗生物質で数日で改善します。
再発を繰り返す場合は包茎の治療を検討します。
移動性精巣(遊走睾丸)
移動性精巣とは、精巣が陰嚢内にない、または鼠径部まで上がっている状態を指します。
入浴時などリラックスしている時は、精巣は陰嚢内に下りてきます。
ほとんどの場合、特に問題はないため、治療は必要ありません。しかし、陰嚢に睾丸が常にない場合は、停留睾丸の可能性があります。
停留睾丸の場合は、治療が必要です。睡眠中や入浴時に陰嚢に睾丸があるかどうかを確認し、ない場合は受診をお勧めします。
停留精巣
停留精巣とは、本来陰嚢内にあるべき睾丸が、腹腔内に留まっている状態を指します。
精巣は胎児の体内で発達し、生まれるころには通常陰嚢へと移動しますが、この移動が途中で止まってしまうことで生じます。多くは自然に改善しません。そのまま放置すると、将来の不妊や精巣がんのリスクが高まるおそれがあります。診断は触診や超音波検査で行い、治療は手術が基本です。異常(睾丸が陰嚢内にないなど)に気づいた場合は、できるだけ早くご相談ください。
陰嚢水腫
陰嚢水腫は、陰嚢内に体液がたまる状態で、多くは痛みがなく自然に治ります。
出生時にお腹との通り道が閉じきらないことが原因で、陰嚢が腫れて見えます。
多くは成長とともに改善しますが、3歳を過ぎても治らない場合や腫れを繰り返す場合は手術が必要です。鼠径ヘルニアの合併もあるため、超音波検査で確認します。
尿道下裂
尿の出口が、亀頭の先端以外の場所に開いてしまう先天性の形態異常です。
軽症の場合は亀頭付近に出口がある場合もありますが、重症の場合は陰茎の根元や陰嚢内に出口が開いている場合もあります。
尿道の位置や経路に違和感がある場合は受診をお勧めします。
膀胱尿管逆流症
膀胱尿管逆流症とは、膀胱内にたまった尿が、本来は流れるはずのない方向、すなわち尿管や腎臓へと逆流してしまう状態を指します。
尿は通常、腎臓で血液が濾過されて作られ、腎盂を経て尿管を通り、膀胱に蓄えられた後、尿道から体外へ排出されます。
しかし、逆流が起こることで、尿路感染症のリスクが高まり、さらには水腎症、腎盂腎炎、腎機能の低下や腎不全へと進行する恐れもあります。
尿路感染症が発症すると、発熱、背部や脇腹の痛み、吐き気や嘔吐、下痢、頻繁な排尿、排尿時の痛みなど、様々な症状が現れることがあります。
このような逆流が疑われる場合は、速やかに泌尿器科を受診することが大切です。お気軽に当院へご相談ください。
