RSウイルス感染症とは?
RSウイルスにより引き起こされる呼吸器の感染症です。2歳までにほとんどのお子さんが一度はかかると言われています。
主な症状は発熱・鼻水・痰のからんだ咳など、いわゆる風邪症状で、数日から1週間程度で回復します。一方で、新生児や1歳未満の乳児、基礎疾患を持つお子さんでは重症化しやすく、「細気管支炎や肺炎」へ進行して入院が必要になることもあるため注意が必要な感染症です。
重症化しやすいお子さん
- 生後6か月未満(特に生後4週以内)の赤ちゃん
- 早産・低出生体重で生まれた赤ちゃん
- 先天性心疾患や慢性肺疾患のあるお子さん
- ダウン症や免疫不全症のお子さん
ヒトメタニューモウイルス
感染症とは?
ヒトメタニューモウイルスは、2001年に発見された比較的新しいウイルスですが、以前から「風邪の原因ウイルス」として存在していたことがわかっています。
特に乳幼児を中心に感染し、繰り返し感染するのが特徴です。多くのお子さんは5歳頃までに一度は感染していると言われています。
主な症状は発熱・鼻水・痰のからんだ咳などです。年長児では軽い風邪症状で済むことが多いですが、乳児ではRSウイルス感染症に似たゼーゼー・ヒューヒューと呼吸が苦しくなる「細気管支炎」を起こすことも珍しくありません。乳幼児や高齢者では重い肺炎になることもありますので注意が必要です。
RSウイルス・
ヒトメタニューモウイルス
の感染経路と流行時期
感染経路
RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスはともに
- 飛沫感染(咳やくしゃみ)
- 接触感染(ウイルスのついた手や物を介して口や鼻に触れる)
で広がります。これらのウイルスはテーブルやドアノブ、おもちゃなどの環境表面で数時間生存するため、感染が強く広がりやすいのが特徴です。
流行時期
RSウイルスは、もともと秋から冬にかけて流行する感染症でした。しかし近年は流行時期がずれ、夏に大流行することもあります。そのため「RSウイルスはいつでも流行する可能性がある」と考えて注意することが大切です。
ヒトメタニューモウイルスは、例年春の3月~6月ごろに流行のピークを迎えます。ただし年によっては秋や冬に流行することもあります。
RSウイルス・
ヒトメタニューモウイルス
の潜伏期間
RSウイルス
潜伏期間は2~8日です。症状が出てから1週間程度は感染力が強いので注意が必要です。
ヒトメタニューモウイルス
潜伏期間は3〜6日程度とされています。また、症状がよくなってきても 1週間程度は咳や鼻水にウイルスが出ることがあるため、周りの人にうつさないよう注意が必要です。
RSウイルス・
ヒトメタニューモウイルス
の診断、治療方法
RSウイルスの診断と治療
診断は鼻から綿棒を入れて抗原検査で行います。特に基礎疾患のある方、乳児など重症化しやすいお子さん、肺炎の兆候があるお子さんを対象に検査します。
RSウイルス感染症に対する特効薬はなく、解熱薬・咳や鼻水の薬・吸入などの対症療法が中心です。重症化リスクの高いお子さんは入院治療が必要になることもあります。
ヒトメタニューモウイルスの診断と治療
診断は鼻から綿棒を入れて抗原検査で行います。ただし、原因がヒトメタニューモウイルスとわかっても 特効薬はなく、治療方針が変わるわけではありません。大切なのは「どのウイルスか」よりも、重症度の判断や、自宅で経過をみてよいかどうかという点です。
当院では、月齢の小さなお子さんや肺炎が疑われる場合、全身状態がよくない場合など、必要と考えられるときに検査を行っています。
ヒトメタニューモウイルスに効く特別なお薬はありません。治療は風邪の時と同じように対症療法が中心です。
- 咳や鼻水を和らげる薬
- 解熱薬の使用
- 鼻水の吸引
- 水分補給や休養
など、症状に合わせたケアを行います。
RSウイルス・
ヒトメタニューモウイルス
の予防方法
「飛沫感染」「接触感染」によりうつります。そのため以下の予防方法がとても有効です。
- 手洗い(流水や石けん、アルコール消毒):子供も大人も手洗いはとても重要です。
- マスクの着用:咳や鼻水のある人は特に有効です。
- おもちゃや家具の消毒:頻繁に触る物の消毒はとても重要です。
- RSウイルスワクチン(シナジス):重症化リスクの高いお子さんのみ接種対象のワクチンがあります。
RSウイルス・
ヒトメタニューモウイルス
の受診の目安
次のような症状がある場合は早めに受診してください。
- 息が苦しそう(ゼイゼイ・ヒューヒュー、胸がペコペコする呼吸)
- ミルクや母乳の飲みが悪い
- 眠れないほど咳き込んでいる
- 顔色が悪い、ぐったりしている
よくある質問(Q&A)
RSウイルスはワクチンで予防できますか?
RSウイルスのワクチンは、重症化しやすいお子さんを対象に接種します。RSウイルスが流行する秋から春にかけて、毎月1回の筋肉注射を継続して接種します。感染を完全に防ぐものではありませんが、かかったときに重症化しないよう守ってくれる効果があります。
ワクチンの対象となるのは
- 早産や低出生体重で生まれた赤ちゃん
- 慢性肺疾患や先天性心疾患のあるお子さん
- 免疫不全のあるお子さん
- ダウン症などの基礎疾患があるお子さん
- 出生時や健診のときに医師からすすめられる方
となります。
RSウイルスは子どもでも自然治癒しますか?
発熱、鼻水、咳などの軽い風邪症状で経過し、多くの場合は数日〜1週間ほどで自然に回復します。ただし、乳児や基礎疾患のあるお子さんでは、ゼーゼーする呼吸(喘鳴)や哺乳困難など重い症状になることがあるので注意が必要です。
RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスの熱は何日続きますか?
- RSウイルス:発熱はおおむね 2〜5日程度で下がることが多いです。
- ヒトメタニューモウイルス:発熱は2〜5日程度続くことがあります。
ただし、乳児や基礎疾患のあるお子さんは症状が重くなることもあります。
発熱からまもなくとも、呼吸が苦しそう、水分が取れない、ぐったりしているなどの様子が見られたときは、自然に下がるのを待たずに、早めに医療機関を受診しましょう。
RSウイルスとヒトメタニューモウイルスは保護者や大人にも感染しますか?
はい。どちらのウイルスも大人にも感染します。ただし、子どもと比べると症状は軽く、いわゆる「風邪症状」でおさまることがほとんどです。
- 大人の症状
発熱、鼻水、咳、のどの痛みなどの軽い風邪のような症状が中心です。 - 重症化しやすい大人
高齢の方や、基礎疾患(心臓や肺の病気、免疫が弱い状態)のある方は、肺炎や気管支炎に進行することもあるため注意が必要です。
RSウイルスにかかったら、早く治す方法はありますか?
残念ながら、RSウイルスに直接効くお薬はまだ存在しません。そのため、こまめな水分補給と栄養を取り、また安静に過ごす(保育園を休む)ことが大切です。RSウイルス感染症は鼻水や痰が多いので、こまめに鼻水を吸ってあげることも有効です。
RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスに感染したら、いつから登園できますか?
どちらの感染症も登園・登校に関する明確な規定はありません。登園再開の目安は症状の回復具合をみながら判断していきます。
- 発熱がなく、元気が戻っている
- 夜も眠れる程度に咳が落ち着いている
- 水分や食事が普段通りにとれている
これらがそろっていれば、登園・登校は可能です。
RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスはうつりやすいのでしょうか?
どちらのウイルスもとても感染しやすいのが特徴です。特に発症から1〜4日間は最も感染力があります。飛沫感染(せきやくしゃみ)や接触感染(ウイルスがついた手やおもちゃを触り、その手で口や鼻をさわる)といった経路が中心です。小さなお子さんはおもちゃを共有したり、手を口に入れたりすることが多いため、園や家庭内で広がりやすいです。
RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスは発熱がない感染もありますか?
多くの場合は発熱しますが、必ずしも発熱するわけではありません。一方で、乳幼児や基礎疾患のあるお子さんは、重症化することがあります。「熱がないから安心」とは限らないので、ゼーゼーする呼吸はないか、水分は取れているか、ぐったりしていないかなど全身の様子を見てあげることが大切です。
ヒトメタニューモウイルスに効く抗生剤はありますか?
ヒトメタニューモウイルスは「ウイルス」が原因の感染症です。そのため、細菌に効く抗生剤(抗生物質)は効きません。残念ながら、ヒトメタニューモウイルスの特効薬もまだなく、治療は症状を和らげる「対症療法」が中心となります。
