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マイコプラズマ・百日咳

マイコプラズマとは?

マイコプラズマとは?マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌によって引き起こされる感染症で、一般的な風邪から気管支炎や肺炎まで起こします。幼児から学童に多く、特に5~13歳に流行しやすい感染症です。

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマに感染しても多くは軽症であり1週間ほどで治りますが、3〜5%の人が肺炎を起こします。発熱後に咳が徐々に強くなり、乾いた咳から痰がらみの咳へと変化し、肺炎になると3〜4週間しつこく咳が続きます。また以前より「異型肺炎」と呼ばれ、肺炎になっても比較的元気な状態であることが多く、一方で学童期〜青年期では免疫反応が強く働くため重症化しやすいといわれています。

マイコプラズマ肺炎の
主な症状

  • 長引く咳(2〜4週間以上続くことも)
  • 発熱(38〜39℃の高熱になる場合もあります)
  • 喉の痛み・頭痛
  • 倦怠感・食欲不振
  • 重症化すると呼吸困難

はじめは風邪症状に似ていますが、長引く咳が特徴です。ときに夜間の咳込みで眠れなくなることもあります。

百日咳とは?

百日咳とは?百日咳菌による呼吸器感染症で、名前の通り長引く咳が特徴です。ワクチン接種で乳幼児の感染は減りましたが、予防効果が弱まる学童期から成人での発症が増えています。大人と子どもで症状が異なり、特に乳児では重症化しやすいため注意が必要です。

主な症状の経過

発症すると徐々に激しい咳が出るようになります。子どもでは典型的に以下の3期に分かれます。

  1. カタル期(1〜2週間)
    鼻水・微熱・軽い咳など風邪に似た症状。感染力が強い時期です。
  2. 痙咳期(けいがいき)
    (2〜3週間)

    顔を真っ赤にして続けて咳き込み、最後に「ヒュー」と息を吸う典型的な咳発作です。夜間に悪化し、吐くこともあります。
  3. 回復期(約2週間)
    少しずつ咳が落ち着いていきますが、しばらく続くことがあります。

生後6ヶ月未満の乳児は重症化しやすく、急に呼吸が止まる(無呼吸発作)ことがあるため入院が必要になる場合もあります。一方、大人は軽症で、熱もなく長引く咳のみで気づかれないまま治ってしまうケースもあります。

マイコプラズマ・百日咳の
感染経路と流行時期

マイコプラズマ

咳やくしゃみによる飛沫感染や、手を介した接触感染で広がります。
4年ごとに大きな流行の波があるのが特徴で、特に夏から秋にかけて患者数が増えます。
家庭や学校など人が集まる場所で広がりやすい感染症です。

百日咳

主に飛沫感染接触感染で広がります。特定の季節に限らず年間を通して発生し、乳幼児から大人まで幅広い年齢層に感染します。大人では軽症のことも多く、気づかずに乳児へうつしてしまうことがあるため注意が必要です。

マイコプラズマ・百日咳は
大人もうつる?

マイコプラズマ

全年齢がかかりますが、特に子どもに多い感染症です。感染力は強くありませんが、家庭内では子どもから親へうつることがよくあります。

百日咳

大人もかかりますが、軽症で風邪と区別がつかないことが多いです。ただし長引く咳で生活に支障が出ることがあります。一方、乳児にうつすと重症化しやすいため注意が必要です。

マイコプラズマ・百日咳
の潜伏期間

マイコプラズマは潜伏期間が2~3週間と長く、インフルエンザのように一気に流行することは少ないのが特徴です。

百日咳は潜伏期間7~10日で、感染しやすい時期は発症1週間前から発症後3週間ほどです。また最も感染力が強いのはカタル期で、はじめの1~2週間です。

マイコプラズマ・百日咳
の診断、治療方法

マイコプラズマ

マイコプラズマ感染症の多くは、発熱や咳といった風邪に似た軽い症状で、1週間ほどの経過で自然に回復することが多く、必ずしも検査や特別な治療は必要ありません。
しかし、約3〜5%の方は肺炎に進展することがあり、「乾いた咳が長引く」「熱がなかなか下がらない」といった特徴が見られます。

肺炎が疑われる場合には、レントゲン以外に以下3つの方法で検査します。

  1. 迅速抗原検査(咽頭を綿棒で拭って調べる方法、15分程度で結果がわかりますが感度があまり高くありません)
  2. LAMP法(DNAを検出する方法で、結果がでるまでに数日かかります)
  3. 抗体検査(血液中の抗体を調べる方法ですが、感染初期には抗体がまだ産生されていないため、感染初期の診断には向かない検査です)

いずれも正確性や使い勝手に限界があり、陰性であっても感染を否定できるわけではありません。当院ではまず迅速抗原検査を行いますが、症状の経過や流行状況からマイコプラズマ肺炎が強く疑われる場合には、検査が陰性でも治療を始めることがあります。

マイコプラズマの治療について

マイコプラズマの治療は、通常の抗菌薬では効果がなく、マクロライド系やキノロン系、テトラサイクリン系といったマイコプラズマに有効な抗菌薬を使用します。

百日咳

百日咳の診断には主に以下の4つの方法があります。

  1. 迅速抗原検査(咽頭を綿棒で拭って調べる方法、15分程度で結果がわかりますが感度があまり高くありません)
  2. 培養検査(結果がでるまでに数日かかります)
  3. LAMP法・PCR法(発症早期からも感度は高く優れていますが、結果がわかるまで数日かかります)
  4. 抗体検査(血液中の抗体を調べる方法ですが、感染初期には抗体がまだ産生されていないため、感染初期の診断には向かない検査です)

マイコプラズマ同様にいずれも正確性や使い勝手に限界があり、陰性であっても感染を否定できるわけではありません。症状の経過や流行状況から百日咳が疑われる場合には、検査せずに治療を始めることがあります。

百日咳の治療について

通常の抗菌薬は効かないので、マクロライド系の抗菌薬を使用します。抗菌薬はカタル期に開始できれば症状は軽くなりますが、痙咳期になるとあまり効果は期待できません。そのため早期に診断できることが望ましいのですが、感染初期は風邪と症状がよく似ており、見極めが非常に難しい病気です。周囲の感染状況は診断にとても有用なので、同じように咳が長引いている方がいれば、診察の際に医師へ伝えていただくことが大切です。また、痙咳期であっても抗菌薬を内服することで、排菌を抑え、周囲への感染拡大を防ぐ効果が期待できます。

マイコプラズマ・百日咳の
予防方法

マイコプラズマ

マイコプラズマ感染を完全に防ぐ方法はなく、残念ながらワクチンもありません。
感染は飛沫や接触を通じて広がるため以下の予防法が有効です。

  • 手洗い・うがいの徹底
  • マスクの着用
  • タオルや食器の共有をしない
  • 人混みを避ける

百日咳

百日咳の予防には、手洗い・うがい・マスクといった基本的な対策に加え、ワクチン接種がとても有効です。生後2カ月から五種混合ワクチンの定期接種が行われ、4回の接種をすることが感染予防に非常に効果的です。

ただし、ワクチンの予防効果は5~10年程度で低下することがわかっており、日本小児科学会では、就学前(5~7歳)のタイミングで、三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)と不活化ポリオの追加接種を推奨しています。

また、11歳からの定期接種である二種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)を、公費から自費となってしまいますが三種混合ワクチンに変更することが可能です。

マイコプラズマ・百日咳の
受診の目安

マイコプラズマの受診の目安

マイコプラズマは、発熱や咳など風邪に似た症状から始まり、多くは軽症のまま自然に回復します。ただし、次のような症状がある場合は受診しましょう。

  • 咳が長引く、咳で夜眠れない
  • 熱が続く、または一度下がっても再び熱が出る
  • 元気や食欲がなく、水分摂取が難しい
  • 呼吸が速い、苦しそうにしている

百日咳の受診の目安

百日咳は、初めは鼻水や咳など普通の風邪と似た症状ですが、次第に咳が強くなり、特に夜間に激しい発作的な咳が続くのが特徴です。次のような症状がある場合は受診しましょう。

  • 咳が2週間以上長引いている
  • 発作的な強い咳で顔が赤くなる、吐いてしまう
  • 咳の後に「ヒュー」と笛のような呼吸音が出る
  • 乳児で、咳の後に呼吸が止まる、顔色が悪くなる

マイコプラズマ・百日咳の
登園・登校の目安

マイコプラズマ・百日咳の登園・登校の目安マイコプラズマ感染症は、明確な登園登校停止の期間は定められていません。そのため、登園・登校の再開は「症状の状態」を目安に判断します。発熱がなく、全身状態が良く、食欲や睡眠が問題なければ登園・登校は可能です。ただし、咳が強く残っている場合は、本人の体力の消耗や周囲への感染拡大のリスクもあるため、無理をせず休養を優先することが必要です。

百日咳は、学校保健安全法で「特有の咳が消失するまで」または「5日間の適切な抗菌薬治療が終了するまで」が登園・登校が停止となります。
しかし、感染初期に診断することが難しく、咳が長引いてから診断されることが多くあります。感染力の強い時期を過ぎてから診断がつくことから出席停止期間については、症状や治療経過に応じて判断が必要となるケースがあるため、登園や登校については医師に相談しましょう。

よくある質問(Q&A)

マイコプラズマについて

マイコプラズマは何日で治りますか?

多くは軽症で、1週間ほどで回復します。ただし、気管支炎や肺炎を合併すると熱が長引いたり、咳が3〜4週間続くこともあります。

マイコプラズマは熱がでますか?

はい、発熱することが多いです。高い熱が数日続くこともあれば、微熱程度でおさまることもあります。

マイコプラズマは抗菌薬を飲まないと治りませんか?

必ずしも抗菌薬を飲む必要はありません。多くの場合、風邪と同じ程度の軽い症状で良くなります。風邪薬を飲んでもなかなか咳がよくならない、何日も熱が下がらず咳がひどくなるなどの症状がある場合、医療機関を受診するとよいでしょう。

マイコプラズマは一度かかっても何回もなりますか?

はい、終生免疫がつかないため、繰り返しかかることがあります。

マイコプラズマ肺炎の症状の特徴は?

熱が下がらない、咳が強くなりしつこいという症状が典型的です。最初は乾いた咳ですが、徐々に痰がらみの咳になります。夜間も咳込みが強くて眠れない、咳込んで吐いてしまうこともあります。このような症状がある場合は、早めに受診しましょう。

マイコプラズマ肺炎は放っておくとどうなりますか?

軽症の場合は自然に回復することもありますが、放置すると咳が長引いたり、肺炎が悪化して高熱や呼吸困難を伴うことがあります。また、まれに中耳炎や気管支炎などの合併症を起こすこともあります。症状が強い場合や長引く場合は、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。

大人もかかりますか?妊婦にかかると重症化しますか?

はい、大人もマイコプラズマに感染することがあります。多くは軽症で風邪に似た症状で済みますが、まれに肺炎や気管支炎になることもあります。妊婦中の場合も胎児への影響はなく、また重症化することは少ないとされていますが、咳や発熱で体力が消耗しやすいため、症状が強い場合は早めに医療機関を受診することが望ましいです。

マイコプラズマ感染の診断で抗菌薬が処方されましたが、苦くて飲めません。

マイコプラズマ感染症の治療に使われる「マクロライド系抗菌薬」は、特に苦みが強いことで知られています。お子さんが少しでも飲みやすくなるよう、次のポイントを参考にしてみてください。

  • 酸性の飲み物とは混ぜないようにしましょう。
    薬のコーティングが溶けてしまい、かえって苦みが強くなります。
    例)柑橘系ジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、ヨーグルトなど
  • 酸性度の低い食べ物・飲み物に混ぜて飲ませましょう。
    牛乳、プリン、練乳、ココア、チョコレートアイスなどが適しています。
    特にチョコレート味は苦みを感じにくくしてくれるためおすすめです。
  • 混ぜるのは飲む直前に。
    時間が経つとコーティングがはずれて苦みが出てしまうため、準備ができたらすぐに飲ませましょう。

百日咳について

百日咳は薬なしでも治りますか?

抗菌薬を内服せずとも、時間の経過で症状が軽快し自然治癒することもあります。特に大人の場合は軽症で済むことが多いです。しかし、乳児では重症化して無呼吸発作など命の危険がある場合もあります。そのため、百日咳と診断された場合は、抗菌薬を早期に内服することで症状の悪化を防ぎ、周囲への感染拡大も抑えることができます。

百日咳は赤ちゃんがかかると重症化しますか?

はい。乳児は咳の発作で呼吸が止まることもあり、とても危険です。入院が必要になることもあります。百日咳で最も深刻なのは「無呼吸」と呼ばれる、息ができなくなる状態です。特に生後6か月以下(とくに3か月未満)の赤ちゃんでは、典型的な咳発作が出る前に突然呼吸が止まり、人工呼吸が必要になったり、死亡するリスクもあるため注意が必要です。

子どもが百日咳にかかりました。家族の登校や勤務はどうなりますか?

家族に症状がなければ登校・勤務は可能です。ただし咳が出ている家族は受診し、必要に応じて検査や治療を受けましょう。

百日咳は何回もかかりますか?

はい。百日咳は一度かかっても一生免疫が続くわけではありません。時間の経過とともに免疫が弱まるため、再び感染することがあります。

大人が百日咳になるとどんな症状が出ますか?

主な症状は、何週間も続くしつこい咳です。典型的な「ヒュー」という音を伴わないことも多く、かぜや気管支炎と間違われやすいです。発熱は軽度か見られないことが多く、咳だけが長引くのが特徴です。咳が長引く場合は、医療機関を受診しましょう。

妊婦が百日咳にかかるとどうなりますか?

激しい咳込みでお腹に強い圧力がかかり、張りが出ることがあります。場合によっては切迫流産や切迫早産のリスクになることもあります。咳が強いときは早めに医療機関を受診しましょう。なお、周囲への感染拡大を防ぐため、まずは産婦人科ではなく内科の受診が推奨されます。

百日咳は一度かかるとどのくらい症状が続きますか?

およそ2か月ほど咳が続くことが多いです。
典型的な子どもの百日咳では、

  • カタル期(1〜2週間):かぜに似た軽い症状から始まり、徐々に咳が強くなる
  • 痙咳期(2〜4週間):短い咳込みが連続し、その後「ヒュー」という吸気音を伴う激しい咳発作が起こる
  • 回復期(約2週間):少しずつ咳が落ち着いていく

という経過をたどります。
大人では典型的な咳発作が出ないことも多く、かぜと見分けがつきにくいですが、咳自体は子どもと同じように長く続き、2か月前後続くことがあります。