溶連菌感染症とは?
溶連菌感染症は、A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)という細菌による感染症です。代表的なのは「咽頭炎(のどの炎症)」で、発熱と喉の強い痛みが特徴です。学童期の子供に多くみられる病気ですが、大人にもうつることがあります。
主な症状
- 高熱(38℃以上)
- のどの強い痛み、赤みや白い膿(扁桃腺の腫れ)
- 小さく紅い発疹(猩紅熱)
- 舌に赤いブツブツができる(イチゴ舌)
- 頭痛や腹痛・嘔吐
一般的な風邪症状の咳や鼻汁があまりないことが特徴です。
アデノウイルスとは?
アデノウイルスは、目やのど、胃腸などに感染し様々な症状を起こすウイルスです。アデノウイルスは、5歳以下の子供に多く、1年中発症しますが、夏と冬に流行しやすい特徴があります。また多くの血清型があり、何度も感染することがあります。
主な症状
- 38〜40℃の高熱
(ときに5日以上続くこともあります) - のどの痛み
- 目の充血や目やに
- 咳・鼻水・くしゃみ
- 下痢・腹痛・嘔吐
アデノウイルスの代表的な感染症
呼吸器感染症
咽頭炎、扁桃炎などを起こし、発熱・のどの痛み・咳・鼻水などの症状がみられます。ときには気管支炎や肺炎になることもあります。
咽頭結膜熱(プール熱)
夏のプールをきっかけに流行することが多いですが、1年を通して見られます。高熱・のどの痛み・目の充血や目やになどが特徴です。発熱や結膜炎の症状がなくなってから2日経過するまで登園・登校はできません。
流行性角結膜炎(はやり目)
白目の充血や大量の目やにが出ます。熱はあまり出ませんが、非常に感染力が強いため、伝染の恐れがなくなるまで登園・登校はできません。
胃腸炎
特に乳児に多く、発熱・下痢・嘔吐・腹痛などの症状がみられます。回復して全身状態がよくなれば登園・登校は可能です。
出血性膀胱炎
排尿時の痛みや血尿、頻尿がみられます。
溶連菌・アデノウイルスの
感染経路と流行時期
感染経路
溶連菌は、主に接触感染でうつります。咳やくしゃみの症状は強くないため、飛沫感染でうつることもありますが少ないです。菌が付着したドアノブやおもちゃなどに触れ、その手で口や鼻を触ると感染します。
アデノウイルスは、飛沫感染・接触感染の両方で広がります。咳やくしゃみによる飛沫に加え、ウイルスが付着した物に触れることで感染します。さらに、プールの水を介して感染することも知られています。
流行時期
- 溶連菌感染症:年間を通して見られますが、特に冬から春先に多い傾向があります。
- アデノウイルス感染症:種類によって異なります。
・咽頭結膜熱(プール熱):夏に多い
・流行性角結膜炎(はやり目):通年
・胃腸炎:冬から春にかけて多い
溶連菌・アデノウイルスの
潜伏期間
溶連菌感染症
溶連菌に感染してから症状が出るまでの 潜伏期間は2〜5日程度です。発熱や喉の痛みなどが急に現れるのが特徴です。
アデノウイルス感染症
アデノウイルスの潜伏期間は 5〜7日程度と少し長めです。原因となる型によっては2週間ほど潜伏することもあるため、感染経路に心当たりがない場合も多いです。
溶連菌・アデノウイルスの
診断、治療方法
溶連菌感染症
- 診断:のどを綿棒でこすって行う迅速検査(10分程度で結果がわかります)で診断が可能です。必要に応じて培養検査を行うこともあります。
- 治療:抗菌薬(抗生物質)による治療が基本です。飲み始めて24時間程度で解熱します。合併症の予防にもつながるので、最後まできちんと飲み切ることが大切です。
アデノウイルス感染症
- 診断:のどや目やにを綿棒でこすり迅速検査で調べることができます。また症状やのどの様子、周囲の流行状況などから、アデノウイルス感染が明らかな場合には、必ずしも検査をせずとも診断が可能な場合があります。
- 治療:ウイルスに効く特効薬はありません。発熱やのどの痛みには解熱剤、目の充血や目やには点眼薬など、症状を和らげる対症療法が中心です。
溶連菌・アデノウイルスの
予防方法
主に子ども同士やご家族の間で広がりやすい感染症です。そのため日常生活の中での対策がとても大切になります。
- 手洗い、うがいを習慣にしましょう
流水と石けんを使った丁寧な手洗いがとても大切です。アルコール消毒も有効です。また食事の前後やトイレの後には必ず手を洗いましょう。 - 食器やタオルの共用を避けましょう
家族間でも、食器やタオルの共用は感染を広げる原因となります。なるべく食器やタオルの共用は避けましょう。またアデノウイルスでは目の症状がある場合、プールを控えることも重要です。
溶連菌・アデノウイルスの
受診の目安
次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 高熱が続く、または喉の痛みが強い
- 食事や水分がとれない
- 発疹が出ている
- 目の充血や痛みが強い
- 下痢や嘔吐が長引く
溶連菌・アデノウイルスの
登園・登校の目安
溶連菌感染症
- 抗菌薬を飲み始めて24時間以上経過し、熱が下がって元気が戻っていることが登園・登校の目安です。
- 園などから登園許可証の提出を求められることもあります。
アデノウイルス感染症
- アデノウイルス感染症(充血を伴わない場合など)
解熱し、全身状態が改善していれば登園・登校は可能です。 - 咽頭結膜熱(プール熱)
主要な症状(発熱・充血・喉の痛みなど)が 消えてから2日経過してから登園・登校が可能です。登園許可証の提出を求められることもあります。 - 流行性角結膜炎(はやり目)
「医師により感染のおそれがないと認められるまで」登園・登校を控えましょう。
よくある質問(Q&A)
溶連菌について
溶連菌は放っておくと危険ですか?
はい。溶連菌感染症をそのままにしておくと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こす可能性があります。これらは心臓や腎臓に影響することもあるため、抗菌薬によるきちんとした治療が必要です。
溶連菌は最初どんな症状が出ますか?
一般的には「急な発熱」と「強い喉の痛み」で始まることが多いです。その他に頭痛、首のリンパ節の腫れ、全身のだるさ、イチゴ舌や体に細かい発疹が見られることがあります。
溶連菌は市販薬で治りますか?
残念ながら市販薬のみでは治りません。溶連菌に効果があるのは抗菌薬(抗生物質)で、病院で処方してもらう必要があります。市販薬で熱や喉の痛みを和らげることはできますが、原因菌を取り除くことはできません。
大人にもうつりますか?
はい。大人にも感染することがあります。特に家庭内で子どもから親へ感染するケースはよく見られます。大人の場合も喉の痛みや発熱などの症状が出たときには、病院を受診しましょう。
家族にうつる確率は?
家庭内は接触の機会が多いため、高い確率でうつることがあります。感染を広げないためには、マスクの着用、うがい・手洗いの徹底、食器やタオルを共有しないといった工夫が大切です。
溶連菌感染後は、尿検査が必要と聞きました。
稀に溶連菌感染後しばらくして「急性糸球体腎炎」という腎炎を合併することがあります。そのため溶連菌感染後2~3週間で尿検査を行います。しかし、「急性糸球体腎炎」は、症状(頭痛、むくみ、体重増加、尿が減る、尿の色が濃い)で明らかな場合が多く、近年は尿検査で腎炎を早期に発見する意義はあまりないと考えられています。このような症状が出現した場合には、病院を受診するようにしてください。
溶連菌にかかり、のどが痛くて食事がとれません。
強い喉の痛みで食欲が落ちることがよくあります。ゼリーやプリン、スープ、ヨーグルトなど喉を通りやすい柔らかい食べ物を選ぶと良いでしょう。水分補給も大切で、脱水を防ぐためにこまめに飲むようにしましょう。
アデノウイルスについて
溶連菌との見分け方は?
どちらも発熱や喉の痛みを起こすため、見分けは非常に難しいことがあります。溶連菌は抗菌薬で治療が必要ですが、アデノウイルスは対症療法が中心です。正しく診断するためには、医療機関での検査が必要となります。
アデノウイルスは最初どんな症状が出ますか?
急な高熱、喉の痛み、咳、鼻水などがよく見られます。また、目の充血や下痢、腹痛を伴うこともあり、症状が幅広いのが特徴です。風邪と見分けにくい場合もあるため、熱が長引くときは受診をおすすめします。
喉の痛みはいつまで続きますか?
個人差はありますが、通常は3〜7日ほどで改善します。熱が下がっても喉の違和感が数日残ることがあります。
大人も感染しますか?
はい。アデノウイルスは大人にも感染します。特に家庭内で子どもからうつることが多いです。手洗い・うたがいやタオルの共有を避けることが大切です。大人も子どもと同じように、高熱、喉の痛み、倦怠感、目の充血などの症状がみられます。
アデノウイルスは一度かかるとかからないのでしょうか?
デノウイルスには50種類以上の型があるため、一度かかっても別の型に感染することがあります。そのため免疫がつきにくく繰り返し感染することがあります。
