- 子どもの便秘とは
- 子どもの便秘のチェックリスト
- 子どもの便秘の解消法
- お薬による子どもの便秘治療
- 子どもの下痢について
- 下痢のときの家庭でのケア
- 子どもの嘔吐について
- 嘔吐時の家庭でのケア
- 下痢・嘔吐の主な要因
- 便秘外来・下痢・嘔吐のよくある質問
子どもの便秘とは
便秘は、便が出ないことだけでなく、「便が出にくい」「便が出ても完全に排便されていない感覚(残便感)」といった症状を伴うこともあります。
通常であれば、食べたものは消化・吸収を経て、腸で栄養や水分が取り込まれたあと、不要な成分や腸内細菌の死骸が便として排出されます。しかし、何らかの理由で便が腸内に長く留まると、水分がどんどん吸収され、便が硬くなってしまいます。
その結果、便がさらに腸内にたまりやすくなり、水分が吸収されてますます硬くなり…という悪循環に陥ってしまいます。この連鎖が続くことで、便秘は慢性化しやすく、改善が難しくなることがあります。
便秘は決して珍しいものではなく、お子様の約10人に1人が経験すると推定されています。お腹の張りや痛みといった不快な症状が出ることもあるため、ふだんの便の様子や回数、量などをこまめにチェックすることが大切です。
乳幼児期の便秘について
乳幼児期のお子様は、食事の変化、母乳やミルクの不足、発汗過多などの要因によって便秘になることがあります。また、粉ミルクを飲んでいる赤ちゃんは、便が硬くなって出にくくなり、便秘になりやすい傾向があります。
便が硬くなると、排便時に痛みや不快感を生じるため便意を我慢してしまい、便秘が悪化することがあります。そのため、便秘は早期に治療することが大切です。
学童期の便秘について
学齢期のお子様は、体質や食物繊維の摂取不足などの要因により、便秘になることがあります。また、朝トイレに行く時間がない、学校でトイレに行きづらいといった環境も、排便を我慢する習慣ができる原因となり、便秘になるリスクが高まります。
便秘は、腸や肛門の疾患、ストレスによって引き起こされることもあるため、症状が出た場合は早めに当院へご相談ください。
子どもの便秘のチェックリスト
便秘は1歳前後の赤ちゃんでも起こることがあり、その症状は大人とは異なります。
以下の症状に注意して、該当するものがないか確認しましょう。
便秘のチェックリスト
- ご飯を食べない、食欲がない
- 無気力、元気がない
- トイレに行こうとしない、トイレを嫌がる
- おならが多く、においが普段と違う
- 不機嫌が長く続く
- 便に粘り気がある
- 下着の汚れが増える
- 排便を我慢することがある
- 便意を感じると、脚を組んで我慢する
など
子どもの便秘の解消法
規則正しい生活
例えば、朝早く起きる、朝食をゆっくり食べる、お風呂でリラックスする時間を取る、夕食を早めに済ませる、早めに就寝するなど、健康的な生活習慣を身につけましょう。
しかし、一度に全てを変えるのは難しいため、小さな変化から始めることが重要です。例えば、朝起きたらまずトイレに行く習慣をつけるだけで、便秘の改善に役立ちます。
バランスの良い食事
便秘のお子様には、特定の食品に偏ることなく、バランスの良い食事を摂ることが重要です。野菜や海藻、果物、穀類などに豊富に含まれる「水溶性食物繊維」を意識的に食事に取り入れましょう。水分もしっかり摂ることが大切ですが、何より大事なのは日々の食生活のバランスです。無理なく続けられる工夫をしながら、腸にやさしい食事を心がけましょう。
トイレを我慢しない
お子様が便意を訴えた場合は、できるだけ早くトイレに連れて行ってください。
便意を我慢すると、便秘が悪化することがあります。
また、トイレトレーニングによって便秘になるお子様もいるため、トイレトレーニングはゆっくりと、お子様のペースで進めることが重要です。
お薬による子どもの便秘治療
便が腸内に長時間留まると、徐々に硬くなり、排便時に痛みが生じます。
その結果、お子様が「排便=痛い」という印象を持ってしまう場合もあります。
当院では、まず生活習慣や食事の見直しを行い、それでも改善が難しい場合にはお子さまの年齢や症状に合わせてお薬を使用します。
お薬は、
- 便をやわらかくするタイプ
- 腸の動きを整えて排便を促すタイプ
- 浣腸や坐薬
- 体質に合わせた漢方薬
などがあります。
お子さまが「排便=すっきりする」と感じられるようサポートし、自然な排便リズムを取り戻せるよう丁寧に治療を進めていきます。
理想のうんちの形はバナナうんち?
うんちは、健康状態を判断する重要な指標のひとつです。硬い便や下痢の便は、排便時に大腸や肛門に大きな負担をかけます。
便秘は、腹痛などのつらい症状を引き起こし、お子様の心身の健康に影響を与えることもあります。理想的なうんちは、表面が滑らかで柔らかく、バナナのような形をしており、力むことなくスムーズに排出されるものとされます。
バナナ型のうんちを目標に、生活習慣を整えましょう。
お通じ日記を付けることも大切です
便秘が治まらない場合は、排便の頻度や形を記録するだけでなく、お子様の好きなキャラクターのノートやシール、スタンプなどを用意して、お通じ日記をつけてみてください。
お子様と一緒に楽しくお通じの記録をつけることをお勧めします。これにより、お子様が排便に対して前向きな姿勢を身につけ、治療の効果を高めることが期待できます。
子どもの下痢について
下痢は、お子さまによく見られる症状のひとつで、ウイルスや細菌による腸の感染が主な原因です。
そのほかにも、冷たい飲食物の摂りすぎや消化の悪い食べ物、アレルギー・ストレス・疲労などが関係して起こることもあります。
下痢になると、腸の動きが活発になって排便が促されるため、お腹の痛み(腹痛)を伴うことがあります。
多くは一時的なものですが、脱水や体力低下につながることもあるため、水分補給をしっかり行い、症状が続く場合は早めの受診をおすすめします。
下痢とともに以下の症状がある場合は、できるだけ早く受診してください
- 元気がない、ぐったりしている
- 水分をとろうとしない、飲みたがらない
- 尿の色が濃い、または尿の回数が少ない・出ていない
- 夜に眠れない、または日中ずっと眠そうにしている
- 目のまわりがくぼんでいる、顔色が悪い
- 口の中が乾いている
など
これらの症状は、脱水や感染症の悪化を示すサインである可能性があります。
受診の際は、便の回数や色・性状、食事・水分摂取の状況、他の症状などを医師にお伝えいただくと、診断の助けになります。
下痢のときの家庭でのケア
お子さまが下痢をしているときは、まず脱水症状を防ぐことが最も大切です。
腸の働きが弱っているため、無理に食べさせたり飲ませすぎたりせず、少しずつこまめに水分を補給することを心がけましょう。
水分補給のポイント
- 水分は**経口補水液(OS-1など)**や湯冷まし、麦茶などを少しずつ与えます。
- 一度にたくさん飲むと、かえって下痢が悪化することがあるため、スプーン1杯ずつ頻回に与えるのがおすすめです。
- 授乳中の赤ちゃんは、母乳・ミルクをいつも通り与えてOKです。無理に制限する必要はありません。
食事のポイント
- 下痢が落ち着くまでは、消化のよい食事を与えましょう。
例)おかゆ、うどん、すりおろしたりんご、バナナ、スープ、豆腐 など - 脂っこいもの、甘いお菓子、乳製品、刺激の強い食品は避けてください。
- 食欲がない場合は、無理に食べさせず、まずは水分を優先しましょう。
お子様に市販の下痢止めを使用しないようにしましょう
下痢の中には、感染によって体内に侵入した毒素や病原菌を体外に排出するために起きていることがあります。
お子様に市販の下痢止め薬を使用すると、必要な排出が妨げられ、症状が悪化する恐れがあります。
そのため、医師に相談せずに自己判断で市販の下痢止め薬を使用することは避けてください。医師の診察を受け、処方されたお薬を正しく服用してください。
子どもの嘔吐について
小さなお子さまは、胃や腸の働きがまだ十分に発達していないため、ちょっとした刺激でも吐いてしまうことがあります。
とくに乳幼児期は消化器がとても繊細で、食べすぎや咳・大泣き・緊張などがきっかけで嘔吐することも珍しくありません。
一方で、嘔吐は感染症や消化器疾患などのサインである場合もあります。
「繰り返し吐く」「ぐったりしている」「水分がとれない」「発熱や下痢を伴う」などの様子がある場合は、早めの受診をおすすめします。
お子さまの状態をよく観察し、気になる症状があればお気軽に当院へご相談ください。
嘔吐時の家庭でのケア
お子さまが嘔吐したときは、まず安静にして休ませることが大切です。
吐いた直後は胃が敏感な状態のため、すぐに水分や食べ物を与えるのは避けましょう。
水分補給のポイント
- 吐いてから1〜2時間ほどは何も口に入れず、落ち着いてから少しずつ水分を与えましょう。
- いきなり多く飲ませず、スプーン1杯〜少量を数分おきに与えるのがコツです。
- 水や湯冷まし、経口補水液(OS-1など)がおすすめです。
- スポーツドリンクは糖分が多いため、薄めて使うようにしましょう。
食事の再開について
- 嘔吐がおさまり、3〜4時間ほど経ってから食欲が戻れば、消化のよい食事を少量ずつ与えます。
- おかゆ、うどん、バナナ、りんごのすりおろし、スープなどが良いでしょう。
- 油っぽいものや繊維の多いもの、乳製品は避けてください。
次のような症状がある場合は、脱水や感染症、消化管の異常などの可能性もあるため、早めに受診してください。
- 繰り返し吐く、吐いた物に血や緑色の液体が混じっている
- 水分を受けつけない、尿が出ていない
- 元気がない、ぐったりしている
- 強い腹痛を訴える、泣き方がいつもと違う
- 高熱がある
下痢・嘔吐の主な要因
お子さまの下痢や嘔吐には、さまざまな原因があります。
一時的な消化不良から感染症、体調やストレスの影響によるものまで多岐にわたります。
それぞれの特徴を理解し、早めに適切な対応を行うことが大切です。
風邪症候群
風邪をひいた際に発熱とともに嘔吐することがあります。
これは、発熱やせき込みによる刺激で胃の働きが一時的に乱れるために起こることが多いです。
ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)
ノロウイルスやロタウイルスなどが代表的な原因です。
水のような黄色〜白っぽい便が特徴で、発熱、咳、鼻水を伴うこともあります。
冬場に流行しやすく、家庭や保育園などで集団感染が起こることもあります。
細菌性胃腸炎(食中毒)
サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌などの細菌が原因となります。
嘔吐や下痢に加えて、高熱や激しい腹痛、血便を伴うことがあります。
感染した食材や十分に加熱されていない食品が原因になるため、食事管理にも注意が必要です。
アセトン血性嘔吐症(自家中毒)
炭水化物の摂取不足や疲労、ストレスがきっかけとなって嘔吐を繰り返すことがあります。
食欲不振や倦怠感、顔色が悪い、甘酸っぱい口臭がするなどの症状を伴うこともあります。
一時的な代謝の乱れによって起こることが多く、安静と水分・糖分の補給が重要です。
腸重積(ちょうじゅうせき)
腸の一部が隣の腸に入り込んでしまう病気です。
激しい腹痛や嘔吐を繰り返し、血の混じったゼリー状の便(イチゴジャム状便)が出ることがあります。
生後6か月~2歳前後に多く見られ、緊急処置が必要になることもあるため、早めの受診が大切です。
便秘外来・下痢・嘔吐の
よくある質問
便秘について
排便がない状態が何日続くと便秘とされるのでしょうか?
一般的に、お子さまの場合は週に2〜3回程度排便があれば正常範囲とされています。
3日以上排便がない、または便がとても硬い・痛がるなどの様子がある場合は、便秘の可能性があります。
そのようなときは早めに小児科へご相談ください。当院でも丁寧に状態を確認し、適切な治療をご案内します。
現在トイレトレーニング中ですが、トイレを嫌がって排便を拒否するようになりました。便秘が心配です。
トイレを嫌がって排便を我慢してしまうと、便が硬くなり、排便時の痛みが強くなることがあります。
その痛みが「トイレ=怖い・痛い」という印象につながり、さらに便秘を悪化させることもあります。
無理にトイレに誘わず、お子さまのペースに合わせて自然に排便のリズムが整うのを待ちましょう。
安心して排便できるようになった段階で、トイレトレーニングを再開するとスムーズです。
子どもに「整腸剤」の服用は有効ですか?
整腸剤は腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えるお薬です。
お子さまの腸の動きを助けることはありますが、慢性的な便秘に対して必ずしも効果があるとは限りません。便秘のタイプによっては、下剤や便を柔らかくするお薬を併用する必要があります。自己判断せず、医師に相談のうえで適切な治療を行いましょう。
子どもの便秘にお勧めの食べ物はありますか?
お子様の便秘改善には、食物繊維が豊富な食材を取り入れた食事が効果的です。例えば、りんごやバナナ、じゃがいも、さつまいも、納豆などは、腸内環境の改善に役立ちます。
また、腸の動きを活発にし、便を柔らかくする働きが期待できる油分を加えることも、ひと工夫としてお勧めです。スープや煮物にオリーブオイルなどを加えることで、排便の状態が良くなることがあります。
水分をたくさん飲むことは良いですか?
水分をしっかりとることは便秘予防に役立ちますが、それだけで便秘が改善するわけではありません。水分が不足すると便が硬くなるため、十分な水分補給は基本となります。
しかし、慢性的な便秘の場合は、便を柔らかくするお薬や整腸剤などを併用することが効果的です。水分摂取は、これらのお薬と併用することで補助的な役割を果たします。
下痢・嘔吐について
いつから通園や外出が可能になりますか?
ノロウイルスやロタウイルスに感染した場合は、学校保健安全法で「出席停止」の対象となっています。登園・登校の再開時期は、症状の経過や全身状態を見て医師が判断します。出席停止の指示がない場合でも、下痢や嘔吐が続いている間は、無理をせず自宅で安静に過ごしてください。また、症状が治まってもウイルスは1か月ほど便に残ることがあります。しばらくは手洗い・トイレ後の消毒を念入りに行いましょう。
下痢と嘔吐がありますが、熱はありません。受診した方が良いでしょうか?
発熱がなくても、ウイルス性胃腸炎などが原因で下痢や嘔吐が続くことがあります。
元気がない、水分や食事を受けつけない、便や嘔吐が数日間続くといった場合は、早めに受診してください。脱水を防ぐためにも、経口補水液などでこまめに水分をとるようにしましょう。
昼間は元気だったのですが、夜になって突然、何度も嘔吐しました。救急病院を受診した方が良いでしょうか?
嘔吐は、体の防御反応として起こることがあります。嘔吐後にスッキリしている場合は、少量ずつ水分を与えて様子を見ましょう。ただし、何も食べていないのに何度も吐く、ぐったりしている、意識がもうろうとしている場合は、夜間でもすぐに救急外来を受診してください。
子どもが今朝から下痢をしています。病院に行くべき基準はありますか?
発熱や嘔吐、強い腹痛、血便がある場合や、ぐったりして水分が取れない、おしっこが少ないといった脱水の兆しが見られる場合は、できるだけ早めに受診してください。
こうした症状がなく、機嫌もよく水分補給ができているようであれば、しばらくご自宅で様子を見ていただいても問題ありません。ご不安な点があれば、早めに当院へご相談ください。
下痢をしている子どもには何を食べさせれば良いですか?
胃腸にやさしい食事を、少量ずつ・ゆっくり与えるようにしましょう。
おかゆ、うどん、バナナ、りんごのすりおろし、湯で野菜などが適しています。
赤ちゃんの場合は、ミルクだけでなく、おかゆなどを少しずつ加えてみてください。
脂っこいものや冷たい飲み物、甘いジュースは避けましょう。
下痢をした場合、脱水症状を予防するにはどうすれば良いですか?
水のような下痢が1日に10回以上続く、尿が減る、唇が乾く、ぐったりしているなどは脱水のサインです。
その場合は、一度にたくさんではなく、20〜50mlずつ少しずつこまめに水分を与えましょう。
赤ちゃんや小さなお子さまには、**経口補水液(赤ちゃん用イオン飲料)**がおすすめです。体への吸収がよく、脱水予防に効果的です。
